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高森明勅
2019.1.6 12:49皇室

改元を巡る安倍政権の“悪手”

今上陛下の即位後
“最初”の国事行為は何だったか。
 
「平成」という新元号に改める
政令を“公布”される事。
具体的には「公布文」に自らご署名の上、
侍従に御璽(ぎょじ)を押させた。
 
その内容は以下の通り。
 
「元号を改める政令をここに公布する。
御名(ぎょめい、今上陛下のご署名)御璽
昭和64年1月7日
内閣総理大臣 竹下登」
 
ところが安倍首相は、
5月1日に即位される新天皇から、
この国事行為を“取り上げる”つもりだ。
 
ご即位1ヶ月前の4月1日に
新元号の政令を閣議決定し、
今上陛下(!)に次の天皇の時代の元号を
“予め”公布して戴くと。
 
何ともツジツマの合わない、
無礼な話ではないか。
 
産経新聞(1月5日付)の記事
(阿比留瑠比記者)にこうある。
 
「政府内にも(新天皇にご署名戴く為に―引用者)
新元号の政令署名(正確には政令ではなく“公布文”
にご署名―引用者)、公布は5月1日でも、
実際の改元は5月2日からでいいとの主張もあった。
…しかし、そうなると新天皇が『平成』とかぶったり、
『平成』で政令に署名したりという矛盾が生まれる。
天皇と元号を不可分とする『一世一元』と
かえって整合性がとれなくなる」と。
 
これは恐らく、
首相サイドの説明をそのまま
鵜呑みにした記述だろう。
 
だがお粗末過ぎる。
 
先に紹介した「平成」への
改元の公布文をよく見て欲しい。
 
日付は「昭和64年1月7日」
(平成への改元は“翌日”に施行)。
 
「『昭和』とかぶったり、
『昭和』で…署名したり」している。
だが、それで何の不都合もなかった。
「矛盾」だとか、「『一世一元』と…
整合性がとれなくなる」
などとは、これまで誰も“全く”考えていない。
 
安倍首相やひたすらその代弁に努める
産経新聞は、昭和から平成への今上陛下の改元は、
「矛盾」した「整合性がとれな」いものだったと、
今さら非難しようとしているのか。
 
それとも、僅か30年前の事実を
綺麗さっぱり忘れ去ったか。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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